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配送ルート最適化とは?EC市場が拡大した中で物流に求められることとは?
近年のEC(電子商取引)需要の急増は、物流企業に大きな影響を与えています。
そのような中で、物流会社に求められる配送ルート最適化とは、どの車両が、どの訪問先を、どのルートで、どの順に回るか、という問題を解決すること、とまとめることができます。
このように、複数の要素が絡むため難しいとされる配送ルート最適化ですが、地図情報システム(GIS)を使うことで、様々な要素を地図上に落とし込むことができ、配送ルートの最適化を実現することができます。
この記事では、EC需要の急増に伴って必要性が増した配送ルート最適化と、そのメリットや課題、そして配送ルート最適化を実現するGISによるソリューションとその事例をご紹介します。
1.EC需要の急増に伴う、配送ルート最適化の必要性
近年EC(電子商取引)需要の急増は、物流企業に大きな影響を与えています。
経済産業省の2015年度「電子商取引に関する市場調査」によると、EC市場は、2015年には全体で13.8兆円の規模、特に物販系分野では7.2兆円規模まで拡大しています。
また、2020年は新型コロナウイルスの影響で、外に出られない状況が続いた結果として、ECの市場規模の拡大はさらに加速しています。
野村総合研究所の調査レポート「ITナビゲーター2020年版」によると、2025年度のEC市場規模は、2019年度の約1.4倍に拡大すると予測されています。
多品種少量型の在庫管理をするECでは、購買には大きく2つの特徴があります。
①小口化
②頻繫化
つまり、ECの増加に伴い、少額での買い物を何回も行うことができるようになったという点が、大きな特徴です。
これは物流にもダイレクトに影響を及ぼします。
国土交通省の「物流の効率化に向けた取組について」レポートによると、宅配便の取扱件数は、2010年からの5年間で約5.3億個(+16%)増加しました。特にtoCの宅配便の7割が通販関連の貨物となっています。
このような、EC需要の増加に伴い、購買の多頻度小ロット化が加速した中で、物流業界としては、いかに効率よい配送ルートを設計するかという点が、大きな課題になっています。
2.配送ルート最適化の課題
配送ルート最適化とは、複数の配送先に対して最も効率よく荷物を届けられるようなルートを設計すること、そのための最適化プロセスのことです。
配送ルート最適化は、別名VRP(Vehicle routing problem:配車ルート解析)とも呼ばれています。
つまり配送ルート最適化とは、どの車両が、どの訪問先を、どのルートで、どの順に回るか、という問題を解決すること、とまとめることができます。
しかし、配送ルート最適化を実現できている企業は少なく、配送の効率化が進んでいないのが日本の物流業界の現状です。
というのも、配送業務には数字に表すことができない要素も多く、本当の意味での最適化にはたどり着かないためです。
配送ルート最適化に関する課題は、上記の通り、
①車両、②配送先、③ルート、④順番
の4つの要素が大きく関わってきます。
その上で、課題としては大きく3つにまとめられます。
配送ルートのパターンが膨大にあるため、最適化が難しい
配送ルートを最適化するには、非常に膨大な時間を要します。
例えば、複数のトラックでの配送を計画する場合、どのトラックをどの配送先に振り分けて、どのルートを通るように指示すればいいか、という最適化プロセスが発生します。しかし、特にルートに関しては、無数にある選択肢の中から最も効率的なルートを選択するのは、非常に難易度が高い問題となります。
配送先数や配送車両数が増えると、選択肢がさらに増加してしまうため、人が簡単に計算できるようなものではなく、コンピュータを用いても膨大な時間がかかってしまうため、最適化が難しくなっています。
配送時間を考慮する必要がある
配送と一言でいっても、配送時間の指定があるだけで、大きな制約が発生してしまいます。
営業所への配送であっても、営業時間内に配送する必要が生じてしまいます。
この配送時間は、配送側から決められるものではないため、最適な配送ルートが見つかったとしても、配送時間に沿って配送できなければいけません。
もちろん、荷物の積み下ろしや滞在時間も考慮に入れる必要があるため、車両が配送先に到着する時間だけを最適化すればよいわけではありません。
このように、配送時間を考慮する必要があるため、配送ルート最適化が困難になっています。
ドライバーへの考慮もしなければいけない
配送で最も重要となるのが、実際に荷物を運ぶドライバーです。
配送時間も考慮した上で最適な配送ルートが見つかったとしても、ドライバーや現場の状況が考慮されていなければ、それは最適化されているとは言えません。
たとえば、特定のドライバーに配送業務量が集中している、総移動時間が長すぎる、休憩のための時間や場所が考慮されていない、といった点が問題となることが多いです。
配送ルート最適化は、カーナビのようにただ2拠点のルートを最適化すればよいわけではありません。車両や配送先、順番、さらに配送時間やドライバー、荷物の積み込み・積み下ろしといった複数の要素が複雑に組み合わさるのが配送業務です。
このような課題が山積みのため、なかなか配送ルートの最適化が進まないのが現状です。
しかし、ESRIジャパンが取り扱うGIS製品「ArcGIS」を導入することで、配送ルート最適化を実現することができます。
3.GISを活用した配送ルート最適化
GIS(ジー アイ エス)とは、Geographic Information System の略称で、地図情報システムのことを指します。ArcGISでは、地図情報に過去の集配実績やトラックの位置情報、積載量、交通状況を重ね合わせることができるため、複数要素での分析ができるようになります。この特徴から、ArcGISを活用することで配送ルート最適化を行うことができるようになります。
>>GISとは? ~物流(ロジスティクス)課題の解決方法をご紹介~
ArcGISを活用することによる効果は、下記のようなものがあげられます。
- 配送時間の削減
- 人件費の削減
- 車両費の削減
- ドライバーの最適化
- 労働時間の改善
- 脱 属人化
- ドライバー管理効率化
- 動態管理
- 配車計画の自動作成
このように様々な効果を得ることができます。
配送ルート最適化を実現することで、時間的にも費用的にもコスト削減につながり、利益率の向上につなげることができます。
4.配送ルート最適化の事例紹介
ArcGISを活用した配送ルート最適化の事例を1つご紹介いたします。
事例概要
生鮮食品を取り扱うオーガニック食品スーパーが、横浜市内でデリバリーサービスを開始。新鮮な食材を効率よく消費者に届けるため、VRP(配車ルート解析)を用いた配送ルート最適化を実施。
配送条件
配送拠点として、店舗:2、配送センター:2、倉庫:1、
合わせて5 拠点からの配達を検討しています。
また、以下が条件となります。
配送先:285 件
勤務時間:8 時間
休憩時間:11 時 ~ 14 時のうち 60 分
受取時間:各顧客ごとに設定
ドライバーの時給:1,500 円
ガソリン代: 115 円/L
上記ではArcGIS で実行できる VRP の条件の一部のみを利用しています。
上記以外にも、各拠点の発着可能時間、積載できる荷物の上限、荷物の積み下ろしに必要な時間など、様々な条件を加味した上で最適なルートを構築できます。
Case1: 現状の拠点から配達
5つの各拠点から 1 台ずつ配車したところ、時間内にすべての顧客に荷物を届けられないことが分かりました。
シミュレーションでは、トラック台数を多めに登録することで必要な台数をシミュレーションできます。
その結果、各拠点から 2 台ずつ、合計 10 台のトラックを配車することで時間内に配送できることが分かりました。
しかしこれでは、時間内に配送できないため、
配送拠点を変更したり、拠点ごとの配送量を調整する必要があります。
Case2: 配送拠点を変更・調整した場合
そこで、倉庫拠点からの配送を多くした場合のシミュレーションも行いました。
倉庫から配送することができれば、各店舗の作業負荷を減らすことができるためです。
シミュレーションの結果、倉庫から 5 台のトラックを配送する条件にしたところ、
他の店舗からは 1 台ずつ、合計 9 台のトラックで配送できることが分かり、
トラック台数を1台減らすことができるようになりました。
配送シミュレーション結果の比較
CASE1 | CASE2 | 差分パーセント | |
総距離(km) | 218.8 | 119.5 | 8.8% |
総運転時間(h) | 62.8 | 57.3 | 8.8% |
総コスト(円) | 131.013 | 101.424 | 22.6% |
Case1 と Case2 を比較した結果、トラックの走行距離に加えて、ドライバーの労働時間も削減可能ということがわかりました。
総コストを比較すると、約 20% 削減できていることが分かります。
このようなシミュレーションを実施することで、配送拠点や配送トラックの台数を最適化し、必要なコストを大幅に削減することができ、経営の効率化に結び付けることができるようになります。
5.配送ルート最適化をGISで解決したい方は、物流・配送・ロジ 地図システム 選定.comにお任せ!
物流・配送・ロジ 地図システム 選定.comを運営するESRIジャパンでは、
これまでに多くの物流会社様にArcGISを導入し、配送ルート最適化を実現しております。
このほかにも、ArcGISを導入することで、配達センターの立地選定、
リアルタイムでの車両状況の確認、配達エリア分析・メンテナンスなど、
様々な分析・シミュレーションを行うことができます。
物流・配送・ロジ 地図システム 選定.comでは、様々なロジスティクスの
課題解決事例をご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。
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